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Hotel Story

ホテル・旅館バーのひととき[ホテル日航成田](3話)

ホテル日航成田スカイバーサンセットラウンジ

3.「フローズン生ビール、モヒート、マーメイド」 ホテル日航成田スカイバーサンセットラウンジ(ホテル日航成田)
Frozen Draft beer & Mojito & Mermaid by Sky Bar Sunset Lounge at Hotel nikko Narita

 さすがにお盆時期の成田は人が多い。いつもなら、がらがらのホテルロビーもチェックインに10分近く待たされることになった。まあ、急いでいるわけでは無いのだが、お盆だと感じさせられる。ちょうど、ロビーのリニューアルも終わったばかりだったので、ロビーは落ち着いた雰囲気になり、ロビーカフェもちょっと高級感があるものに変わっていた。いつも成田に泊まるときは、海外への出発の前日が多いため、旅行前のなんとなく楽しい気分を味わえる。
このホテルのバーは一番上のフロアにある。成田のホテルはスカイラウンジが多い。もちろん、その理由は飛行機が見えるからだ。このホテルのスカイラウンジからは成田の第2ターミナルがはっきりと見える。その向こうに飛行機が離発着するところも見ることができる。飛行機好きには嬉しいラウンジだ。

 僕はいつのものようにチェックインを済ませて、部屋でまずは落ち着いたあと、ホテルの中を散歩しながら、バーのオープンまでを過ごした。
オープン時間でも、この時期の空は明るい。サンセットを見ながらの一杯は格別だ。
オープン後少したって、バーに入った。
「いらっしゃいませ。席はどちらが良いですか?」
「カウンターで」
いつものようにカウンターにすると先客が一名いた。奥のテーブル席にはすでに80代とみえるご夫婦と、若いカップルが一組すでに座っていた。
さすがにお盆のホテルのバーはにぎやかだなと思った。
ホテルは割引サービスもしているので、それで気軽に来る客も多いが、やはりいつもの客数では無い。
でも、僕はバーは少しにぎやかなくらいが好きだ。

このホテルのバーはとても凝った作りをしている。
木のロングカウンターはぴかぴかにワックスがかけられて雰囲気も良く、全てのカウンターから空港が見渡せる。JBLのスピーカーからはスロージャズが流れて、落ち着いた雰囲気作りに参加している。
またカウンターは赤のアルコールランプに、小さな観葉植物の鉢が一定の間隔で置かれていて、品が良い。このカウンターからの空港の眺めは最高だ。

さて、いつものように1人でメニューをみていた。いつもメニューは眺めるようにゆっくりみてしまうので、バーテンダーがオーダーに来たときはまだ決まっていないことが多いのだが、今日はタイミングが良く、決めたときにオーダーを取ってくれた。
最初はフローズン生ビール、泡の部分が凍っているという生ビールだ。泡を凍らせて出すという発想はまた楽しい。凍っているので、泡部分を避けて飲むことが出来るので、最後までどんなにへたに飲んでも泡は最後まで残っている。従ってビールは最後まで美味しく飲める。さらに泡のしゃりしゃり感が暑さを飛ばしてくれる。(ように思える)
そんな夏のビールだ。
楽しく飲んでいると、横にいるカウンターの男性はオーダーをしていた。
「ウイスキーシングルでお湯割りにして」
「かしこまりました」
暑い中、ウイスキーのお湯割りとはなかなかおもしろいな、と思っていると、バーテンダーとも仲が良いのか、いろいろな話をしはじめていた。
「やっぱり、マークはこっちでなくちゃ」
などと会社のブランドロゴについて語っていた。
なるほど、僕もそう思うよ、と1人心の中で思いながら、その男性客とバーテンダーとの会話をジャズのBGMとともに聞いていた。

男性客の会話は止まること無く続いていて、僕はそれを聞いていた。男性客は楽しそうに話をしていたから、僕はほろ酔いになりながらも楽しく感じていた。
バーでは愚痴を言う人は少ないと思う。
それは雰囲気と、ある種きっちりした独特の空間のなせる技なのかも知れない。
それなりに経験のある男性の談義は結構楽しいものだ。

僕は生ビールを飲み終えると、次にモヒートをオーダーした。
夏のカクテルの代名詞にもなってきたモヒートだが、美味しい店は少ないし、街中のバーではモヒートは面倒なので作らないバーもある。しかしここのモヒートは洗練されていた。
美味しい。
夏のアルコール2種を味わいながら、空港の夜景を見て、のんびりするのはなんとも贅沢な時間だ。
さっきよりもカップルが3組も増えていた。
それぞれ、夜景とアルコールを楽しみに来たようだ。カップルはみんなカウンターでは無く奥のテーブル席に通されるので、会話はわからないが、明日の海外出発を前に楽しい夜の時間を過ごしているのがわかる。
そんなカップルを見るのはとてもいいものだ。
そんなことを考えて、1人飲んでいた。
いつもなら宿泊しているホテルバーでは2杯までと決めているのだが、そんな雰囲気に負けて、もう一杯頼むことにした。
「ホテルのオリジナルカクテルが飲みたいんですが、何かありますか?」
僕が女性バーテンダーに聞くと、
「はい、今なら夏限定ですがオリジナルカクテルがあります」
と、夏のために作られた別メニューを示し、4種のカクテルをそれぞれ説明してくれた。
僕はその中から1つを選んだ。
「じゃあ、このマーメイドをもらえますか?」
「はい、かしこまりました」
マーメイドは夏限定のカクテルで、ラムとマンゴーシロップ、パイナップルジュースがそれぞれ同量ずつ入っているのだという。最後にマラスキーノチェリーを沈めて、小さな南国の花を飾ってある。甘そうなカクテルだが、デザートとしては良いなと思ったので、それにした。
バーテンダーは右袖に行くと準備をしてくれた。
今日はお客も多いので、かなり忙しくしている。
少したって、出来上がったカクテルを持ってきてくれた。
「どうぞ、マーメイドです」
「こちらは、向こうのバーテンダーが考案したものなんですよ」
そういって、もう1人の女性バーテンダーを示し、説明してくれた。
僕は一口飲むと、なるほど、女性が考案したカクテルだと感じた。とろっとした甘さがラムを覆うような感じで、確かに女性には飲みやすいだろうと思った。そしてネーミングは人魚。僕には少し甘めだったが、最後の一杯には良かった。
さっと飲むと、いつもより酔った状態で良い気分だった。
夏のカクテル、女性バーテンダーが考案したカクテルは、ほんのちょっぴり甘く、恋心を感じるようなカクテルだった。
僕はちょっと照れながら、初めてこのカクテルを飲む女性はきっとこのチェリーは食べるのか迷うのだろうなと思いながら、ふとそんな女性がとなりにいたら、などと考えてしまった。

「好きなように食べていいんだよ」
と、心で話しかけながら、僕は飲み終えたグラスに残った、最後のマラスキーノミントチェリーを食べた。

 次はどこのホテルのバーにお邪魔しようか。
 それともどこの旅館のバーにしようか。

*ホテルのカクテルとビール
・フローズン生ビール
・モヒート
・マーメイド[ラム、マンゴーシロップ、パイナップルジュースを同量、最後にマラスキーノミントチェリー(緑のチェリー)を沈めて、南国の小さな花を飾る]

**文章は全て創作であり、登場人物は実在の人物とは関係ありません。

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