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[旅行コラムその5]温泉の泉質とその適応症、禁忌症について

 温泉の定義については理解していただけたと思います。温泉法という堅苦しい定義ですから文章もかたいのですが、イメージはできるでしょう。
実質主義な方はどちらかというと、温泉の定義よりもむしろ、泉質やその温泉の適応症についてが気になることと思います。実際、ここの温泉は○○に効く、と言われるとそれで出かける方も多く、また、古くから温泉は長期間の宿泊で体調を整えるために利用されてきました。

 そこで、やはり温泉に行くなら、行く前にその地の温泉の泉質と適応症を知っておくと、プラシーボ効果も相まって、気持ちもリフレッシュ出来ると思いますので、ここでしっかり記述しておきたいと思います。温泉の定義と同様、環境省の1次情報をもとに記述します。

 泉質と適応症ですが、実はこの2つは深い関係があります。
そもそも環境省の資料によると、温泉の適応症決定基準は、「温泉の医治効用は、その温度その他の物理的因子、化学的成分、温泉地の地勢、気候、利用者の生活状態の変化その他諸般の総合作用に対する生体反応によるもので、温泉の成分のみによって各温泉の効用を確定することは困難であるが、療養泉の適応症はおおむね別表1一般的適応症及び別表2泉質別適応症によること。」とされています。
かなりくだけた言い方をすると、療養泉の効用は泉質で判断しているけれど、温泉地の環境や人によっても違うので一概に言えないということでしょうか。こういったことから、適応症はだいたいの目安としてということで良いかと思います。あとはやはり口コミでしょうか。効用があるような温泉地や温泉はやはり何世代も歴史を経て、何に効用があるかなどが広まっていくものですから、こうした古くからの情報も予め仕入れておくと、気持ちの上でのリフレッシュもかなり出来ると思います。

 さて、まずは温泉の泉質をまとめてみましょう。
泉質名にもいくつかの違いがあります。掲示用泉質名、旧泉質名、新泉質名の3つです。掲示用泉質名は温泉旅館などに行って温泉に入ると掲示されているものです。現在温泉成分は10年ごとの定期的な分析を行い、その結果に基づいて掲示しなければならない内容があります。その中のメインが泉質です。

その掲示されている泉質名は次の11種類です。
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温泉の泉質名
1.単純温泉
2.二酸化炭素泉
3.炭酸水素塩泉
4.塩化物泉
5.硫酸塩泉
6.含鉄泉
7.含アルミニウム泉
8.含銅ー鉄泉
9.硫黄泉
10.酸性泉
11.放射能泉
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これに対して適応症と禁忌症は温泉の内、療養泉(浴用)に設定されています。
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別表1
◆療養泉の一般的適応症(浴用)
神経症、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進

別表2
◆泉質別適応症
・塩化物泉
[浴用]きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病
[飲用]慢性消化器病、慢性便秘

・炭酸水素塩泉
[浴用]きりきず、やけど、慢性皮膚病
[飲用]慢性消化器病、糖尿病、痛風、肝臓病

・硫酸塩泉(鉄ー硫酸塩泉及びアルミニウムー硫酸塩泉を除く)
[浴用]動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病
[飲用]慢性胆嚢炎、胆石症、慢性便秘、肥満症、糖尿病、痛風

・二酸化炭素泉
[浴用]高血圧症、動脈硬化症、きりきず、やけど
[飲用]慢性消化器病、慢性便秘

・含鉄泉
[浴用]月経障害
[飲用]貧血

・含銅ー鉄泉
[浴用]月経障害
[飲用]貧血

・硫黄泉
[浴用]慢性皮膚病、慢性婦人病、きりきず、糖尿病(硫化水素型)、高血圧症、動脈硬化症、その他は上記に準ずる
[飲用]糖尿病、痛風、便秘

・酸性泉
[浴用]慢性皮膚病
[飲用]慢性消化器病

・含アルミニウム泉
[浴用]慢性皮膚病
[飲用]慢性消化器病

・放射能泉
[浴用]痛風、動脈硬化症、高血圧症、慢性胆嚢炎、胆石症、慢性皮膚病、慢性婦人病
[飲用]痛風、慢性消化器病、慢性胆嚢炎、胆石症、神経痛、筋肉痛、関節痛

注意)
1.泉質が重複する場合は次によることとする。
(1)塩類泉において分類された泉質が重複する場合については、医師の意見を聴いた上、それぞれの適応症を併記するかどうか決定する。
例)ナトリウムー塩化物・硫酸塩泉の場合は、塩化物泉及び硫酸塩泉に該当させるのか、塩化物泉のみに該当させるのかを決定する。

(2)特殊成分を含む療養泉の適応症は、すべてのものを併記する。(ただし重複するものはいずれか一方を除外する。)
例)酸性・含硫黄ーナトリウムー硫酸塩泉の場合は、酸性泉、硫黄泉及び硫酸塩泉に該当させる。

2.単純温泉については泉質別適応症を定めていないが、アルカリ性単純温泉については伝統的適応症があることをかんがみ、適応症の決定に当たっては、この点に留意すること。

3.特定の源泉について別表1及び2に掲げる一般的及び泉質別適応症のほか伝統的適応症を適応症として決定する場合は、専門的知識を有する医師の意見を参考とすることが望ましい。
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このように書いてみると、適応症には泉質によって、結構違いがあることがわかります。
ですので、こうしたことも含めて温泉の選択をするといつもよりも効用がアップするかも知れませんね。

最後に温泉の禁忌症も大切なので記述しておきます。
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別表1
◆温泉の一般的禁忌症(浴用)
急性疾患(特に熱がある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)

別表2
◆泉質別禁忌症
・塩化物泉
[浴用]空欄
[飲用]腎臓病、高血圧症、その他一般にむくみのあるもの、甲状腺機能亢進症のときはヨウ素を含有する温泉を禁忌とする

・炭酸水素泉
[浴用]空欄
[飲用]ナトリウムー炭酸水素泉は塩化物泉に準ずる

・硫酸塩泉(鉄ー硫酸塩泉及びアルミニウムー硫酸塩泉を除く)
[浴用]空欄
[飲用]下痢の時、ナトリウムー硫酸塩泉は塩化物泉に準ずる

・二酸化炭素泉
[浴用]空欄
[飲用]下痢の時

・硫黄泉
[浴用]皮膚、粘膜の過敏な人特に光線過敏症の人、(硫化水素型)高齢者の皮膚乾燥症
[飲用]下痢の時

・酸性泉
[浴用]硫黄泉に準ずる
[飲用]空欄
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ここまで泉質と適応症、禁忌症についてまとめてみました。
この他浴用または飲用上の注意事項も細かく決められていますので、温泉療養をする場合は、特にこういった点に留意して、理解した上で利用するようにしたいですね。

次回は泉質と適応症がわかったところで、それぞれの泉質の代表的な温泉又は温泉地を紹介したいと思います。

*参考文献、サイト等
・環境省自然環境局サイト

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